この地球上に生命が息づくプロセスには驚きの連続です。そうしたプロセスの一つに、エネルギーの生成と伝達があります。エネルギーとは簡単に言えば「生命の通貨」です。エネルギーの源とは何か、どうすれば生活の中でより多くのエネルギーを得られるのかを見ていきましょう。
植物は生命を維持して成長するために、太陽エネルギーを光合成によって化学エネルギーに変換しています。人間は体内の細胞内にあるミトコンドリアというエネルギー生成機関を使って、食べたものからエネルギーを生み出しています。
ミトコンドリア: 体のエネルギー工場
ミトコンドリアは、小さくて驚異的なエネルギー工場です。ミトコンドリアの数は各細胞のエネルギー必要量によって変わります。ほとんどの細胞は約300個のミトコンドリアを備えています。しかし、肝臓や心臓のようにエネルギーを多く必要とする細胞には、一つあたり2,000個や5,000個のミトコンドリアが存在します。また脳細胞の中には、一つあたり100万個近いミトコンドリアが存在するものもあります。
原始生物の細胞が初期のバクテリアを取り込んだことで、ミトコンドリアはその細胞を宿主として15億年以上前に原始生物の細胞の一部となりました。宿主となった原始的な細胞はミトコンドリアとなるバクテリアを破壊することができなかったことから、細胞(宿主)とバクテリア(後のミトコンドリア)は共存するようになり、やがて一つになりました。また興味深いことに、人間が生殖する際に、子に受け継がれるのは母親のミトコンドリアDNAです。
ミトコンドリアは、摂取した食べ物と呼吸で取り入れた酸素を組み合わせてエネルギーを作り出します。作られたエネルギーは、アデノシン三リン酸(ATP)という化学物質の形で循環します。驚くべきことに、体内のミトコンドリアは、体重とほぼ同量のATPを生成しています。
ATP:人間を活気づける「エネルギーの通貨」
ATPは「生きるために必要な化学反応の通貨」と言えます。そして、ミトコンドリアから生み出されるATPの総量が、総合的なエネルギーレベルを決定します。脳の機能、老化の早さ、体の炎症の程度、老化に伴う慢性疾患発症の可能性などに、ATPレベルは大きな影響を与えます。
そして、ミトコンドリアの機能(細胞のエネルギー生成力)の減退は、免疫機能の低下や感染症の重症化にも繋がります。だからこそ、ミトコンドリアの機能を高める方法を考える必要があるのです。
ミトコンドリアの機能は全体として、調光のスイッチのようなものです。ミトコンドリアの機能が低下していると、ほとんどの人は1日を過ごすのにやっとのエネルギーしか得られず、「ブレインフォグ」状態(ぼんやりとした状態)になります。エネルギー生成の低下が長期間続くと、細胞の健康状態が悪化して病気になる可能性があります。
逆に、細胞が元気であれば生命力も強くなるのです。すべてが明るく感じられるようになり、特に心が明るくなります。そして、これがまさに、エネルギーレベル、メンタルの機能、そして加齢に伴うあらゆる健康状態を改善する際の目標となるのです。
脳は体の中で最も代謝が活発な組織であり、ミトコンドリアの機能低下が最も顕著に現れることが多くあります。そして、ミトコンドリアの機能低下は体のあらゆる細胞や機能に影響を与えます。
例えば、肝臓の細胞にエネルギーが不足していると、体の解毒作用が正常に働かなくなります。筋肉のミトコンドリアが正常な働きをしていなければ、代謝によって老廃物を排出することができないため、筋肉が弱まり、触ると痛むようになります。
ミトコンドリアが正常に機能していないことは深刻な問題に繋がります。慢性疲労症候群を含む複雑な慢性疾患の症状の多くは、こうしたことが原因であると言えるかもしれません。
ミトコンドリアの機能改善
ミトコンドリアの機能が高まると、エネルギーレベルが上がり、健康を守ることができるという研究結果が増えているようです。また、ミトコンドリアの機能を高めることは、脳の老化のような老化現象を遅らせる鍵も握っています。
ミトコンドリアの機能を高める上で、必要な栄養素や心がけたい習慣は次の通りです。
- 必須栄養素を全て補給する。
- ミトコンドリアを活性化させるサプリメントを摂取して、ミトコンドリアの機能を正常に保ち且つ強化する。
- 有害要素[喫煙、環境毒素(農薬、除草剤、鉛、水銀、カドミウムなどの重金属など)、ドラッグなど]にあまり触れないようにする。
ミトコンドリアが正常に機能するためには、栄養の基礎的構成要素が必要です。例えば、十分なタンパク質、適量の脂質、良質な炭水化物源、ビタミン、ミネラル、そして十分な水分があげられます。
健康維持やミトコンドリアに必要な、おすすめの基礎サプリメントを紹介します。
- 高品質なマルチビタミンとミネラルが配合されたサプリメントを摂取する。
- 十分なビタミンD3 (通常1日2000~5000 IU)を摂取し、ビタミンD3の血中濃度を最適な水準(50~80 ng/ml)に上昇させる。
- 高品質な フィッシュオイル 製品を摂取して1日に1000mgのEPAとDHAを補給する。
- フラボノイドが豊富に含まれるエキス( レスベラトロール、 ブドウ種子または 松樹皮抽出物など)のような植物由来の還元成分をより多く摂取する。
ATPでオーケストラのような美しい音楽を奏でさせるには、こうした食品化合物が決定的に重要なのです。ビタミンとミネラルは、ミトコンドリアでのエネルギー生成や細胞の基本的な機能維持など、体にとって重要な役割を果たします。そのため、すべての人にとって不可欠な栄養素なのです。そして、 ビタミンB群、 ビタミンC、 鉄、 マグネシウム、 亜鉛などの栄養素を補給することでミトコンドリアや細胞の機能が高まることがあるという点で、これらの栄養素が気分や心身のエネルギーレベルを高めてくれるということが示されています。1
また、必須栄養素以外にも、ミトコンドリアの機能をさらに高める次のようなサプリメントが効果的な場合もあります。
NAC
N-アセチルシステイン (NAC) は、ミトコンドリアを保護する重要な還元成分 物質であるグルタチオンのレベルを上昇させる場合があります。 グルタチオン レベルが低いと、老化が加速し、記憶力の低下、インスリン抵抗性、そして大半の慢性退行性疾患などの老化に関わる疾患のリスク上昇につながることがあります。なぜなら、グルタチオンの量が少ないと、ミトコンドリアの機能低につながるためです。NACはグルタチオンを増加させる最も効率的な手段の1つですが、L-グルタチオンはサプリメントで摂取することもできます。2-4
CoQ10
コエンザイムQ10 と ピロロキノリンキノン(PQQ) は、ミトコンドリアの機能をサポートする重要なサプリメントで、相乗効果が得られる場合もあります。その相乗効果は、車のエンジン内でガソリンに火をつける点火プラグのような役割を果たします。車が最初にエンジンの点火をしなければ動かないのと同様に、ミトコンドリアもCoQ10やPQQによる刺激がなければ、食事で摂った脂質燃やしてエネルギーを生成することはできません。PQQのもう一つの利点は、ミトコンドリア生合成という、新しいミトコンドリアを自然に作り出すのをサポートする可能性があることです。そのため、PQQはミトコンドリアを活性化させる非常素晴らしい栄養素なのです。5 PQQは体内で生成されないため、人間のような哺乳類にとって、まさに必須栄養素と言えるかもしれません。臨床試験では、PQQを摂取した健康な被験者の細胞のエネルギーレベルが向上したそうです。つまり、PQQレベルが上がると細胞機能が向上し、よりエネルギーを実感できる可能性があります。6,7
CoQ10は体内で作ることもできます。しかし、特定の状況下ではCoQ10の生成量は低下するため、適切なレベルを回復する目的でCoQ10サプリメントを使用すると絶大な効果を得られることが、多くの研究で示されたそうです。心肺機能が低下している方、高血圧の方、スタチン系コレステロール低下剤を服用されている方などには、これが特にあてはまると言えます。こうした症状はCoQ10レベルの低下と関連しており、サプリメントを摂取してCoQ10の血中濃度を正常値に戻すことができるかもしれません。8,9
さらに、一般に高齢者の方は加齢に伴ってCoQ10の量が減少すると知られており、より多くのCoQ10を摂取すべきとも言えるでしょう。そして、CoQ10の量の低下はエネルギー生成量の減少を意味し、疲労、細胞機能や脳機能の低下につながるため、良好な状態とは言えません。8 しかし幸いにも、中年被験者を対象とした実験で、毎日200mgのCoQ10と20mgのPQQの組み合わせて摂取すれば、どちらかの栄養素だけを摂取するよりも、記憶力と脳機能がはるかに向上するという結果が出ています。10
カルニチン
カルニチンは、ミトコンドリアでは燃料噴射装置のような役割をすると言えるかもしれません。しかし、ミトコンドリアはガソリンを燃焼させるのではなく、脂肪、特に長鎖脂肪酸を燃やしてエネルギーを作り出しています。カルニチンは、この長い脂肪の鎖をミトコンドリアへ運ぶのに必要となります。11 アセチル-L-カルニチン の形がおすすめと言えます。ミトコンドリアを若返らせるためのサポートをすると言われています。12
アルファリポ酸
アルファリポ酸 は含硫ビタミン様物質で、ミトコンドリアでのATP生成に関わる2つの重要なエネルギー生成反応に必要な補因子として必要不可欠な役割を果たしていると考えられています。リポ酸は肝臓の健康状態と代謝の改善をサポートすることがあります。個人的には、安定化したR-リポ酸が最適な形だと思われます。13
エネルギーレベルの向上ついての最後の考察
夜間に良質な睡眠をとれば、エネルギーレベル、ミトコンドリアの機能、健康全般そして感染症への抵抗力が向上する可能性があることは、申し上げておきます。補給した方が良い栄養素のひとつに マグネシウムがあります。マグネシウムの摂取量が低いと、ミトコンドリアの機能が低下して疲労を感じることがあります。 つまりマグネシウムは、エネルギーの増加をサポートするのです。また、特に就寝時にマグネシウムを摂取すれば、鎮静効果によって安眠をサポートする場合もあります。 14
マグネシウムは、ほとんどの人が十分に摂取できていない重要な栄養素です。特に疲労で苦しんでいる方は、マグネシウムレベルを上げることでエネルギーレベルが大幅に改善することがあります。1,15
マグネシウムには、いくつかの形があります。マグネシウムは、特にクエン酸やグリシン(ビスグリシン酸)、アスパラギン酸、リンゴ酸と結合すると、容易に経口吸収されるとする研究もあります。一方、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの無機マグネシウムは一般に吸収率は高いとされていますが、大量に摂取すると下痢を引き起こすとも言われています。




