https://youtu.be/GWAyyTNRydo?si=8CLiBsQ3xiVODN_7
歓喜の頌歌
夜明け前の空気は、まだひんやりとしていた。蒼白い光が差し込み、街の喧騒がゆっくりと目を覚まし始める。
慎ームに立っていた。スーツのポケットに手を突っ込みながら、深く息を吸い込む。仕事に向かう人々の足音が響く中、彼はふと空を見上げた。
「人生は、いつもバラ色とはいかないな……」
呟くように口にしたその言葉は、冷たい朝の空気に溶けて消えた。会社では締め切りに追われ、家では家族を支える責任が重くのしかかる。社会人としての務めを果たし、家庭を守る。そのすべてが彼の肩にのしかかる日々だった。
「四苦八苦……か」
慎一の脳裏に、かつて読んだ詩がよぎる。
花のいのちはみじかくて、苦しきことのみ多かりき
人の一生は、思うようにいかないことばかりだ。しかし、それでも――。
電車の到着を知らせる音が鳴り響く。慎一は改めて背筋を伸ばし、静かにホームの端を見つめた。
「欲が苦しみの原因である。欲を去れ」
仏陀の教えを思い出す。しかし、すべての欲を捨て去ることは難しい。社会で生きていく以上、最低限の欲望は必要だ。それでも、慎一は思う。
「必要な欲望ですら、時に壁に阻まれる……」
満員電車の扉が開く。押し寄せる人の波に飲み込まれそうになりながら、慎一は奥へと進んだ。揺れる車内でつり革を握りしめ、ふと車窓に映る自分を見つめる。
――このままでいいのか?
仕事に追われ、責任に押しつぶされ、ただ流されるように生きる。それが本当に「生きる」ということなのか。慎一は目を閉じ、深く息を吸った。
「いや、違うな」
目を開けた瞬間、彼の中で何かが変わった。どんなに困難でも、どんなに苦しくても、希望を持って生きることはできるはずだ。悲しみや悩みを引きずって生きるのではなく、喜びを持って生きる。
「生きてさえいれば、どんなことだって可能になる」
会社のビルが見えてきた。電車を降り、慎一は改めて歩き出す。
――今日は、どんな日になるだろうか?
ふと、目の前の青空が広がる。その青さに心を満たされながら、彼は静かに微笑んだ。
「よし、今日も頑張るか」
生きていることに感謝し、明日を迎える。人生はバラ色とは限らない。けれど、自らの心がバラ色に染め上げることはできるはずだ。
喜びを持って、今日を生きよう。




