やがてひき合わされたところによると、リンポーチェの先輩すじにあたる聖師で、メ チワラサンガラターナというかたであった。
「スリランカの出身で、非常な学僧です。 去年、ここへ寺院を建てたのだそうです。 わた しもここへ来るまで知りませんでした」
そう、リンポーチェがいった。
「仏陀が十八年間説法されたこの精舎のそばで、生涯を終えるのが、わたくしのかねてか らの念願でした」
サンガラターナ師は、あたりに響きわたるような大きな声で語った。ややなまりのある 英語であった。 がっしりとした頑丈そうな体格で、声が大きいのは健康なのだろう。八十 一歳という年齢を聞いてびっくりした。 どうみても六十歳代としかみえないのである。 師が先に立って、精舎を案内してくださった。われわれが師をガイドに得たことはじつ にしあわせであった。観光会社がつけてくれたガイドも、この地のことにはあまり知識が なく、リンポーチェにしても、数年前に一度しか来たことがなかったのである。 他の仏跡 地のように、 サヘト・マヘトには案内人がいないのである。もし、サンガラターナ師がお
られなかったら、われわれは、祇園精舎をただあるきまわるだけで、ひとつひとつの遺跡 について、くわしいことはなにひとつ知ることはできなかったであろう。師は、わが家の 庭のごとく、愛情をこめて、あれこれと指さしながら説明して行く。
小高い丘の上に立って、わたくしは師の説明を聞いていた。
そのとき、突然、それがやってきたのだった。
師の大きな声が突然すうっと遠のいたかと思うと、右ななめ前方から、 がぁんと、頭か らにかけてなぐりつけられたような衝撃を感じたのだ。
目の中を白い閃光が飛んだ。剣道で力いっぱい面を打たれたとき、目の中を走るあの 光に似ていた。わたくしは思わずくらくらとして、額に手をあてた。一種のバイブレーシ ョンであることはわかった。わたくしも密教の修行者として各地の霊場をあるき、何度か 霊的なバイブレーションをうけている。しかし、こんなすさまじい叩きつけるようなバイ ブレーションははじめてであった。しかもまったく無防禦だったので、完全に不意をつか れたという感じだった。どこでも霊場へ入るときには、それなりの心がまえをして入る。
だからつよいバイブレーションをうけてもうけとめられるのだが、ここでは全く無防禦だ