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ただ一瞬のこの霊的バイブレーションに如かぬこと を思い知らされた。

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小高い丘の上に立って、わたくしは師の説明を聞いていた。

 

 

そのとき、突然、それがやってきたのだった。

師の大きな声が突然すうっと遠のいたかと思うと、右ななめ前方から、 がぁんと、頭か らにかけてなぐりつけられたような衝撃を感じたのだ。

目の中を白い閃光が飛んだ。剣道で力いっぱい面を打たれたとき、目の中を走るあの 光に似ていた。わたくしは思わずくらくらとして、額に手をあてた。一種のバイブレーシ ョンであることはわかった。わたくしも密教の修行者として各地の霊場をあるき、何度か 霊的なバイブレーションをうけている。しかし、こんなすさまじい叩きつけるようなバイ ブレーションははじめてであった。しかもまったく無防禦だったので、完全に不意をつか れたという感じだった。どこでも霊場へ入るときには、それなりの心がまえをして入る。

だからつよいバイブレーションをうけてもうけとめられるのだが、ここでは全く無防禦だ

「待ってください」

ったので、その衝撃はことにつよかったのだ。数秒つづいたように感じたが、それはほんの一瞬のようであった。師の大きな声がふたたび耳によみがえってた。

わたくしは手をあげて師を制した。

「ちょっと待って。わたくしはいま、ものすごいバイブレーションを感じたのです。 それ はものすごいバイブレーションで、そう、あの方向からきました。あれはなんですか? あの地は

わたくしは、その衝撃がきたと思われる方向をゆびさした。五十メートルほど前方に、 雑草の生いしげった凹地があった。そこから、それがきたと思われた。

「ああ、あれですか」

と師はうなずいた。

「あれは、ミラクルの池です。」

「ミラクルの池?」

 

「そう、ミラクルの池。仏陀が奇蹟をおあらわしになった。 そこであそこを、ミラクルの池とよぶのです」

 

 

「そのミラクルとは、どんなミラクルなのですか?」

それは、仏陀が空中浮揚してこの池の上に立ち、上半身を火に、下半身を水に変えた

「ほう、それはどういうことですか?」

それはですね、と師の説明によると、こうであった。

 

 

それは突然ななめ前方からやってきた。

一瞬、目がくらむほどの衝撃だった。

そんなことなどぜんぜん予期しておらずまったく無防備だった自分は、あっというま その衝撃に叩きのめされてしまったのだ。

修行、学問、そんなものはなんの役にも立たぬものであることを思い知らされた。 こころひそかに誇っていたこれまでの自分の修行も教学も、あっというまに消しとん でしまった。叩きのめされてしまった。

これなんだ、これでなくてはならないのだ。これしかないのだ。目もくらむようなあ

この白銀の輝きにみちたバイブレーション!

一〇〇年の修行も万巻の教学も、ただ一瞬のこの霊的バイブレーションに如かぬこと を思い知らされた。

これがそれだったのだ。これが究極のそれだったのだ。このためにこそわたくしはこ こにやってきたのだ。

おお、サイト・マト、聖なる地、

あなたはここに待っていてくださった。

わたくしがいまあなたから受けたものを、これからわたくしはひとびとにあたえねば ならぬ。

いま、わたくしは聖者であることをつよく自覚する。

すべてのひとびとがこの聖なるバイブレーションを受けることのできる聖地を、わた くしはひがしの国につくらねばならぬ。この輝きにみちたサイト・マトの地を、そ

そうですか。

のまま、日本の国にうつさねばならぬ。 それがわたくしの使命だったのですね。それ をかならずはたすことをわたくしはあなたに誓います。

もう一度、わたくしはこの地に来なければならないのですね。だが、そのときなにが 起きるのでしょうか? そのとき起きる或ることを、わたくしは非常なおそれの感情 とともに予感します。

ああ、あの一瞬の霊的バイブレーション!

一〇〇年の苦行も万巻の書物も、このバイブレーションなくしては、路傍の石ころに も劣るのだった。このバイブレーションをあたえることのできる聖者こそ、真の導師 だったのだ。 理解できました。

聖師よ、ありがとう!

書き終えて、わたくしは虚脱状態になった。

昭和五十五年十一月八日

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