また、ゼネラル・エレクトリック社は、アメリカ陸軍用に「ペディプレター」(歩行操縦器)を
つくりつつある。竹馬の長い足のように、それをつけると巨大な歩幅で歩きまわることのできる
器械である。竹馬とちがってこの金属の脚には膝や躁関節があり、バランスがとれているかどう
かを知らせ、調節する仕組みになっている。われわれはこの器械をつけることにより、ちょっと
したビルなどひとまたぎにし、一キロの道を五、六歩で歩いていってしまうようになるだろう。
将来は、この種の器械や装置を組み合せて、大またで歩いたり、重い物をかるがると持ち上げた
りするだけでなく、あらゆる動作――長い距離を非常なスピードで泳いだり、一日も二日も水底
を泳ぎまわったり、枝から枝へとびうつったりを、やすやすとやってのけるようになるだろう。
明らかに、これは単なるキカイではなく、それは人間の働きに同化した『人間増幅器である。
「や人間と機械は新しい関係にはいった。二者が事実上見分けられないほどたがいにまざり合
っているような関係――サイボーグとはこのような混成生物にたいしてつくられた言葉である」
とG・R・ティラーは、サイボーグに対して新しい定義をくだす。
しかし、ヒトのサイボーグ化の究極は、手や足や肺ではなく、結局、ヒトの知能の中枢である
大脳の増幅ということになるであろう。
すでにそれは始まっている。ヒトの脳とコンピューターを直結する技術に科学者たちはとり組
んでいる。「西歴二〇一八年」は、 その頃までにそれは可能になるであろうと予測している。そ
ういうと、いかにコンピューターを埋めこむのかと聞かれる。
いう方向に研究はすすめられつつあるようである。だが、しかし、実際にはその反対のことも起
こり得る可能性があるのだ。つまり、コンピューターのなかに、生体部品→腦ーをおくことだっ
て考えられないことではないのである。それは、ヒトとキカイとの完全な合成である。人間と機
械との複合結婚!、そういうものが起こりつつあるように思える。
SF作家のアイザック・アシモフは人間と機械の混血した新しい生物種ができることを予言し
ている。すると科学におけるヒトの改造の極致は結局それなのか?そのうち、われわれは、機
械化したヒトに話しかけているのか、ヒト化した機械に話しかけているのか、わからなくなる日
がやってくるだろう。あるいはまた、自分自身でさえ、そのどちらであるのかわからないという
が。
かくしてホモ・サピエンスは消えてゆく。
ヒトは、自分たちがい出ほろびるという絶滅意識を持たぬまま、しずかに機械のなかに吸収さ
れてしまうのか?あるいは、かえって、最後のホモ・サピエンスは、これほどの科学を生み出
した科学者の功績をほめたたえつつ、ある日、突然、その意識を機械のなかに消してゆくのであ
おうか?もしもそうだとするならば、これこそまさに、一00万年のヒトの歴史と、ヒトとい
う生物の持つすべての盾をその一瞬にかけた世紀の一大ナンセンスというべきだろう。あなた
かじゅん
不死の複製人クローン人
それでは、もうひとつ、科学の最後の提案をみてみよう。
さきに述べた遺伝工学の件ででもわかるように、生物学は、いまや、生物現象のなかでももっ
とも重要な領域、すなわち、生物の生殖過程までも変化させはじめている。
近年、避妊や、精子の長期保存、人工授精の新しい技術、さらにごく最近では種々の不妊症を
回復させる新しい方法などについていろいろな解説が普及し、研究がすすめられつつあること
は、すでにポピュラーな事実である。そのなかでも、もっとも目ざましいのが、遺伝子の配列を
変えて、生物―ことにヒトを改造しようという技術であった。これはさきの項で述べたが、い
ま、この遺伝子変換の法とならんですすめられつつあるいくつかの研究のなかで、まさに驚天動
地ともいうべき技術の開発がひとつある。
これがもしも完全に成功したならば、その技術において、ヒトはまさに神になったといっても
よいであろう。ただし、技術の面だけでのことだが――。
それはすでにごく一部のジャーナリズムに注目されはじめ、報道記事にされている。さし木
から生まれたアインシュタインたち』というような、興味をそそられる見出しで報じられた研究
161 科学におけるヒトの改造
「もっと科学的にいうならば、それは、クローン人ともいうべきものだ」
162
と、G・R・ティラーは註釈する。
クローン人とは、一個体の細胞から無性的に増殖・分化して生じた同一人間群のことである。
今から七、八年ほど前のこと、アメリカのユーネル大学でひとりの科学者が、彼として最初の
研究結果を発表したとき、周囲のみんなから、それは誇大な自己宣伝だと受けとられてしまっ
た。それは、それほど突飛な、いわば意想外ともいうべきものだったのである。けれども、その
内容を検討して、それが決して誇大なものではないことを知った世界的な生物学者ジョシュア・
レーダーバーグは、溜め息をついてこういった。
「私たちは、大変な変革的な動乱のがけっぷち」にいるのかも知れぬ」
と。
その研究は、地球上の植物、動物、人間など、すべての生命の現在の立場を根底からゆるがし
んでしまう可能性にみちたものだったのである。
その科学者というのは、コーネル大学の細胞・生理・成長・分化研究所長のF・C・スチュワ
ード教授である。驚異にみちた彼の研究とはこうである。詳細なその研究内容の解説を、G. Ra
ray Taylors The Biological Time Bomb” 「生物学的時限爆弾」(邦訳、人間に未来はあるか、
す刊)から引用させていただこう。
ーーランジンの、つまり私たちの食べている部分から細胞をとり出し、それを、ゆっくり回
新しくいるのはいった管のなかに入れる。その時差液のなかには、普通には使われていない成分ココナツミルクがふくまれていた。彼は「私たちはほとんど動かない」 ニンジンの
細胞にドラマチックな変化が起きるなどとは期待していなかった」と述べている。それにもかか
わらず、ニンジンの組織は急に成長しはじめた。
三週間もたたないうちに、どんどん重さがふえ、もとの約八〇倍になった。彼はこういってい
る。
「それは、ちょうど、ユュナツミルクがクラッチのように働き、成長という、から廻りしていた
細胞のエンジンに、ギヤがはいったようであった…」
成長をうながす他の物質について、各種の実験が終わってから、研究は第二の段階へはいっ
た。百におよぶニンジンの外植体”(個体からその一部を分離し、体外で培養して得た個体)が、た
ったひとつの容器のなかで、培されたのである。これらの細胞はそれぞれ違った経過をたど
る。非常に大きくなるのもある。順次、分裂して、フィラメント状になるのもある。酵母菌のよ
うに芽を出すものもある。さらにあるものはーーそしてこれがこの話の要点だ細胞塊とな
り、根を出しはじめる。固体培地へ移してやると、緑の芽をかき出す。ふたたび土壌へ移して培
義してやると、普通の根と茎と花と種子のあるニンジンになった!
今から亡の年前に、オーストリアの生物学者G・ハーバーランドは、このような、栄養生殖
《結性生源)が、いっか実現することを夢みていた。その夢を、スチュワードは現実のものにした
のである。その後の実験から、ニンジンの初期の歴のひとつからとり出した細胞のほとんどどれ
164
でも、先に述べたように、無性的に個体にまで成長させることができることが実証された。
スチュワードが難関を突破して以来、べつの研究者たちはタバコについて同様な実験に成功し
た。これは,ニンジンの場合とはまた少し違った培養の操作手順を苦心して見出さねばならなか
った。それぞれの植物により、その培養条件は違っているもののようである。これと同じこと
が、まもなくほかのどんた植物でも成功すると考えられている。
ところで、
間習は、これと同じことが動物細胞についてもできるかどうかということである。
その答は、決して不可能なことではない、というものである。
もちろん、それは容易なものではない。
大体、実験室で細胞を培養することは、けっして新しい技術ではない。けれども、たった一個
の細胞をもとに、これを薄層の組織にまで成長させる方法が発見されたのは、つい十数年まえの
ことである。普通は、たった一個の細胞では、栄養培地中におかれても分裂できない。故ウィル
トン・アールが、ある方法を発見してこれに成功した。が、これらの培養細胞は、分裂増殖して
大きくはなっても、器官などの構造体を形成する気配をほとんど示さない。器官の形成は、多
分、隣りにある別の組織から出てくる化学物質によるものだと思われている。ある程度の見当は
ついており、現在、その点の究明に研究がすすめられつつある。正直いって、まだ、細胞培養と
察官の開には、橋がかけられていないというのが実状である。
だから、動物細胞を栄養培養してひとつの完全生物にまですることは、ニンジンやタバコの場
合のように、スムーズにはゆかない。けれども、生物学者はけっして不可能だとは考えていな
い。時間の問題だと思っている。すでに、スチュワードが突破口を開いたと確信している。現代
の最も鋭い科学者のひとり、故J・B・ホールデン教授は、クローン人のできる可能性をもっと
も真剣に考えていたひとりであった。彼の見解では、われわれはすでに植物においてやりとげて
しまっているのだから、培義細胞から有機的な組織体をつくる方法を、いつか必ず発見するだろ
ちし、これによって、人類発展の可能性を劇的に高めることになろう」と確信し、 つぎのよ
うな未来展望をしている。
彼によると、競技運動家とか舞踊家のクローンは若い人からとってもよいが、大部分のクロー
ンは少なくとも五〇歳以上の人からつくられるであろうという。クローン人は、社会的に高く評
価されるきわめてすぐれた業績を上げた人たちからつくられる。ただその場合、その成功が単な
る偶然にもとづいたものでないように注意されることはもちろんである。
また、彼はこうもいう。
『たとえ、その才能の評価に多少疑問はあっても、珍しい才能を持った人からつくったクローン
人も同じように有益であろう。たとえば暗にいつまでも適応できる人とか、痛みを感じな
い人、東洋の日の行者のように、内識のなかに起こっていることを見破り、それをコントロー
できる人はどー。
私は思うのだ。
いつの日か、クローン人製造の原型を募集して、盛大なコンテストなどのひらかれている風景
を。そこでは、われと思わん応募者遷がにかいい間に大いにもてはやされそうな妙技や、ちょう
ほうな能力などをご披露して、首尾よく選に入ると、自分の複製!生きた複製を長く後世にっ
たえるチャンスを持つことができるのだそうだ。コンテストといえば、現在、さかんに行なわれ
ている美人コンテストも、現在以上さかんにからかれるだろう。美人をながめていることはだれ
だって不愉快なことではないし、退に入った夫人は、どんどん複製されて、一万人でも10万人
でも、希望投票が多ければ、百万人だってどんどんつくれるのである。
想像してごらんなさい。世界中の女性の三分の一がマリリン・モンローで、三分の一がリズ・
テーラーで、あとの三分の一が、やはりこれまた代表的な美人のだれかになってしまうというこ
とだって不可能ではないのだ。もちろん、男性側も同じことが可能である。もっとも、男性の場
合は、ハンサムばかりが能ではないから、才能によって選抜分類されるかも知れないな。
それからまた、クローン人製造は、人類に貢献したひとを長く顕彰するための手段として採用
されるようになるかも知れない。なぜならば、クローン人というのは一種の「不死人」だから
が、フランスの生物学者ジャン・ロメタンが指摘しているように、ひとりの人間の何百何千とい
おきらくることは、ある意味で、その人に不死あたえることである。というのは,その子
かさらにターン化されて寝袋され、限りなくこれがつづけられるからである。銅像による表おなご
など、ナンセンス」というわけである。
遺伝学では、獲得形質は遺伝しないというのが定説である。後天的に得た才能、能力は遺伝し
ないという。私はこれに疑問を持っているが、まあ、それはいい。クローン人製造により、すぐ
れた才能、珍しい能力、上き容姿、など、それを持つ人それ自身が、そのままコピーされてふ
えでゆくのだから、獲得形質がつたえられようとつたえられまいと、そんなことはどうでもえ
え、結構なことじゃ、はやくそうならんかい。世界中の女子はんがみんな美人になって、どんな
神明でも選り取りちゅうのは結構じゃ、とあなたは手ばなしで喜ぶのか? まあ、ちょっと待ち
なさい。その間にあなたにおたずねしたいことがある。あなたは何か能がおありかな? なに、
無い?? ソバを10杯ひといきに食う? だめじゃ。そんなものは芸にもならん。それで
はあなたはハンサムかな?なに、十人なみ? ふうむ、貴公、気の毒 じ ゃ が消される運命じ
。ーまり、クローン人製造技術が完成するとそれを、ティラーは紀元二〇〇〇年少し
以降に可能になるのだというのだが、世の中は、すぐれた能力、なにかきわ立った才能、よき資
を持ったクローン人ばかりになってしまうのである。皮肉ではないか。クローン人出現をもっ
ともみ、かつそれによってもっとも利益や恩恵をこうむる普通一般の大衆たちは間もなく絶滅
してしまい、いるのはクローン人ばかりであるということになってしまうのだ。クローン人とし
くし、ぐず識のある人間のみクローン化するわけであり、そういうすぐれたクローン人
がどんどん加しぐいったら、なんの才能もない平凡な人たちは次第に淘汰され、社会の片すみ
167 科学におけるヒトのトーク※料が速くるるのお陰があるため、前身で なしまうので選などのみ、当落選。タク
18外の定後ろでとまるである。ある。設定方法を考を。なあと気がつかた流大勢の
ターン表を及類、統、分泌を気前出会いできるをうっすら。発部分を多めであ
「高でる姿がみえるかのページのあるのであるがる。うるるるるるが、象外
で、録音、私を育へ。ぬすためのクリーンルを
かきをしている。
必然魔が変海外でくる。あるのか。
及たら究気、変動要
それに。一線での活用の外るできるタなった。逆原始まで
「知る。意外なクーン城が決めたある。また、生演奏シーンです。
あるあ
をある。一変一に参家を建月後に市で家を新発売の演を果た。連すめ
の後、電界の遂定を後かくなのでなる。巻線路を進みタタタベータがある美メージ。影
絶をしたイラックダン学院事漢撃島の星空の中で、変です。要するの
後に残すめら広間にかすぎなを多め、後。ある。外奏す。3、後海道、撮影
を要録をするがためであった。
が、、。
あるもんかい
ないのです。
かも知れぬが、それではせっかくつくり出したクローン人の甲斐がなくなってしまう。クローン
人と普通人との交配により、いくらか人類のレベルは上がるかも知れないが、ほとんどたいした
ことはない。
それに、なによりも、危険なのは、利己的な人間がこれを利用することである。ティラーがい
うように、二、三人ものヒットラーやスターリンがいたら想像するだけでもごめんこうむりた
い、のである。
独裁者のいる侵略国家が、軍事目的にかなった科学者、軍人、兵士のクローン人を無制限につ
くって世界に攻撃を開始したらどうなるか? 一国の独裁者がそう決定してその計画をおし進め
たら、他の国においても、これに対抗するためには、同じ方法をとるよりほかないのである。で
なければ絶滅だ。
さいわいにして、クローン人製造技術が、平和的な方向にだけ使われたとして、それでも困難
な事態の起きる可能性がひとつある。動物を、クローン人製造のような方法で大規模につくり出
してゆくと、正常な進化の過程に大きな障害が起きるのである。
動物や植物の育種家たちは、よりよい血統をつくるのには、有性生殖と栄養生殖とを組み合わ
せることが必要であることをよく知っている。二つのちがった血統の生物をかけ合わせると、科
学的な根拠はいくぶんアイマイだが、雑種強勢(雑種は一般に純系や自殖系統よりも生育が盛んで、病
きなどにも続いことをいうが起きるといわれている。人間が無性的に栄養生殖でつくられると
すると、環境に順応しない人間が淘汰されずにすむことになり、たいへんなことになってしま
う。進化過程が止まってしまって、予想もできない重大な結果をひきおこすことになる。さきに
引用したレーダーバーグの溜め息まじりの警告は、そこをいっているのである。もちろん、やが
では、優秀なクローン人たちが、そのトラブルの解決法を考え出すかも知れない。 だが、それ
は、どこまでも、かも知れないの範囲にとどまる。われわれは、かも知れないことに、全世界の
人の運命と未来をかけることはできない。この技術の開発は、用い方さえあやまらなければ、
たしかに、人間の進化と利便に益することも多大であろう。しかし、その反面、あまりにも多く
の映にみちている。それに、それは、技術以外の分野で解決しなければならぬ問題をあまりに
くかかえており、現在の人類の知識の段階では、前進よりも抑制のほうに票を投じるべきだ
とは思うのだが、陪審員であるあなたの採決はどんなものであろうか?
169-学におけるヒトの改造
166〜科学におけるヒトの改造
163,科学におけるヒトの改造
一学におけるヒトの改造

