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光と寿命を無限に持つ仏

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極楽の時は、苦しみを知らない静謐(せいひつ)な調べに満ちていた。

だがその中にあっても、ひとつの問いが信成の心に芽生えつつあった。

 

――自分は、救われた。だが、あの世にはまだ、多くの者が迷っている。

 

かつて自らの罪に苦しみ、救いを知らずに命を絶った者たち。戦乱の中で子を失った母。孤独の闇に沈む老人――

あの人々は、今もなお、闇の中で声なき声をあげているのではないか。

 

そのとき、彼の前に現れたのは観音菩薩だった。

白き蓮の上に立つその姿は、慈悲そのものであった。

 

「阿弥陀の浄土に至った者よ。そなたに問う」

 

「安らぎにとどまり、この光の中で無量の寿命を楽しむか。
あるいは、再び彼岸を渡り、迷いの世界に還って、苦しむ者たちに手を差し伸べるか」

 

信成は、しばし黙した。

だがその背後から、静かに声が聞こえた。

「父上……私も、共に参ります」

 

それは、若くして病で亡くなった娘の声だった。彼女もまた、極楽に導かれた者のひとりであった。

 

やがて、かつて娑婆で罪を重ねた男、老いた尼僧、名もなき若者たち――
多くの者が、次々と蓮華の上に立ち、口をそろえて言った。

 

「私たちは、還ります。今度は、誰かのために」

 

その光景を見て、阿弥陀如来はゆるやかにうなずいた。

 

「そなたらは、すでに仏の道を歩み始めておる」

 

そして、光に包まれた如来の掌から、ひとつひとつの**光珠(こうじゅ)**が彼らの胸に落とされた。

 

それは――慈悲と智慧の火。

闇の中でも消えることなく、すべての命を照らす灯火。

 

観音菩薩が、優しく微笑む。

 

「そなたらは、いまより菩薩なり」

 

「迷いの者と共に歩き、共に苦しみ、共に涙し、そして共に救われるであろう」

 

蓮の花が、ひとつ、またひとつ閉じるように、彼らの姿は光に溶けていった。

新たなる誓いを胸に、彼らは――再び、この世に降りる。

 

誰も知らぬ町の片隅に、
静かに微笑むひとりの僧侶が立つ。

あるいは、ホームレスに温かい食事を届ける少女。

あるいは、自分を責める者に、たったひとこと「だいじょうぶ」と言える青年。

 

彼らこそ、極楽より還ってきた者たち。

人知れずこの世を照らす、菩薩の化身である。

 

名を呼び、救われた者が、次は誰かの名を呼ぶ者になる。

それが、阿弥陀如来の願いを果たす道なのだ。

 

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