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間脳思考

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間脳思考

石畳の冷えた床に、弟子は正座していた。静寂の中で、師の声が響く。

「人間は、新皮質に理性を、辺縁系に本能を担っている。だがそのあいだに――もうひとつ、間脳がある」

師は深く息をつき、灯明の光に照らされた横顔が影を帯びた。

「この間脳こそが“霊性の場”だ。しかしその扉が閉ざされたがゆえに、人は自我に縛られ、苦しみの連鎖を生むようになった」

弟子は思わず拳を握った。心の奥底に、言葉が鋭く突き刺さる。

「本来は三つの力が、縁起の法に従って調和して働くように設計されていた。縁起とは、すべての存在が互いに依存し、孤立せず、関わり合って立つ法だ。新皮質も旧皮質も間脳も、それぞれ独立しているのではなく、全体として“空”という構造をなしていたのだ」

師の声は、まるで洞窟に響く鐘のように、胸の奥で反響する。

「だが進化の途中で、霊性の場は閉ざされた。縁起の網は寸断され、人間は“空”を知らず、“我”に閉じこもった。その結果、無明が生まれ、貪瞋痴がはびこったのだ」

弟子の視界が揺らぐ。灯明の火が波紋のように震え、師の言葉と共鳴しているかのようだった。

「もし間脳が再び開かれれば、如来蔵の光が顕れる。すべての衆生の内に秘められた覚りの胎蔵――それが如来蔵だ。視床下部と松果腺が共鳴するとき、その光は現れ、第三の眼は宇宙を映し出す。もはや人は個別の存在ではなく、法界そのものの呼吸となる」

師の目が静かに弟子を見据える。そこには燃える火も、冷たい氷もなく、ただ透明な真実があった。

「成仏とは、法界の呼吸と一つになること。死後の逃避ではない。今、この瞬間に霊性の場を開くこと。これこそが涅槃であり、解脱なのだ」

その瞬間、弟子の胸に熱いものが込み上げた。言葉にならぬ涙が頬を伝い、彼はただ深く頭を垂れた。

 

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