観自在菩薩は、静かに目を閉じ、深い瞑想に入っていた。般若波羅蜜多の道を一歩一歩進む中、彼は目の前に広がる真実の光景を見つめていた。五つの蘊、すなわち色・受・想・行・識――これらすべてが空であることが明らかになり、彼の心は次第に一切の苦悩から解き放たれていった。
「舎利弗よ…」観自在菩薩は柔らかく語りかける。「色とは空であり、空とは色である。色が空であるゆえに、空の中には色が存在しないのだ。そして、受も想も行も識も、すべて同じく空である。」
彼の言葉は、深い静寂の中で響いた。舎利弗はじっと耳を傾け、理解を深めるように眉間にしわを寄せている。観自在菩薩の声は続く。
「舎利弗よ、この世のすべての法は、空相なのだ。生まれることもなく、滅びることもない。不浄でもなく、清浄でもなく、増えることもなく、減ることもない。それゆえ、この空には、色もなく、受・想・行・識も存在しない。目も耳も鼻も舌も身も意も、また色・声・香・味・触・法もないのだ。」
彼の言葉は、一つひとつが重く、そして広がりを持っていた。舎利弗の心の中に、無数の思索が浮かんでは消えていく。
「無明から無明の尽きるところまで、そして老死に至るまで、すべては同じなのだ。苦・集・滅・道さえも、空であり、何も得ることはない。」
観自在菩薩の眼差しは柔らかでありながらも鋭い。舎利弗はその言葉の重みを感じながら、悟りに近づいていくのを感じた。
「何も得るものがないゆえに、心には障りがない。恐れもなく、悩みや迷いから解き放たれ、究極の涅槃へと至るのだ。」
観自在菩薩は一息つき、空を見上げた。その瞳には無限の智慧が宿っている。
「三世の諸仏たちは、この般若波羅蜜多によって、完全なる覚り、阿耨多羅三藐三菩提を得た。それこそが、大いなる真言であり、すべての苦悩を除く真実の言葉だ。」
彼の唇から、静かに真言が発せられる。
「ガテ・ガテ・パラ・ガテ・パラ・サンガテ・ボディ・ソワカ…」
その瞬間、世界は静まり返り、舎利弗の心の中に広がる無限の空が、すべてを包み込んだ。
