塔寺の中庭には、静かな風がそよぎ、木々の葉がささやくように揺れていた。青空の下、修行者の僧たちは黙々と歩き、深い瞑想に沈んでいる。若い優婆塞、名をアラカとする彼は、その静寂の中に足を踏み入れた。彼は師から教わった「信・戒・施」の教えを胸に刻みながら、今日も塔寺を訪れ、正法を学び続けていた。
「アラカよ、信仰、戒律、布施――これらは仏道修行の基本である。しかし、それだけでは不十分だ。真の優婆塞となるには、さらに聞・持・観の修行を積まねばならぬ」と師は何度も繰り返した。
アラカは師の言葉を思い出しながら、塔寺の奥へ進む。道場の扉を開けると、中には座禅を組んでいる師、沙門のアジャリがいた。アラカは静かに師の前に座り、一心に耳を傾けた。今日も師から説かれる正法の言葉を、ひとつも漏らさぬよう心を集中させる。
「聞くことが大事だ、アラカよ。しかし、ただ聞くだけでは足りぬ。聞いた教えをしっかりと心に留め、自分のものとしなければならない。それが持だ。」
アラカは頷き、師の言葉を反芻する。彼は、聞いた教えを持ち続け、自分の生活や心の中で生かそうと日々努めていた。だが、師は続ける。
「だが、それだけでもまだ足りぬ。持った教えを深く観察し、その中にある真理を見出さねばならぬ。これが観の修行だ。心を澄ませ、諸法の深い意味に目を向けるのだ。」
アラカは悟る。聞・持・観、この三つが揃って初めて真の修行が成り立つのだと。そして、それが完全な優婆塞への道であることも理解する。仏の教えをただ聞くだけでなく、それを深く心に刻み、さらにその奥に潜む真理を見つけ出す。それこそが修行者の務めであり、彼が目指す道だった。
「精進するのだ、アラカ。信・戒・施だけではなく、聞・持・観を積み重ねて、真の道を歩め」と師の言葉が静かに響いた。
その日、アラカは塔寺を後にし、静かな夕暮れの中、帰路に就いた。だが、彼の心はもう一度塔寺に戻り、師の前で正法を聞く時を待ち望んでいた。聞・持・観――その三つの修行が彼の未来を照らす光となるだろうと信じていた。
