メラトニン・ケトン体

「アンチエイジングフード研究室」という名前の通り、ミトコンドリアに直接取り込まれて活性化し、アンチエイジングに効果を持つさまざまな食品成分を探し、その機能について研究しています。 特にミトコンドリアを活性化する有機酸とケトン体の神経細胞の保護作用を研究しています。

 また、テルペノイドという物質の一種である「ゾナロール」が潰瘍性大腸炎を抑制することを突き止め、現在は食品会社と連携しながら、臨床試験の実施を目指しています。
 「ゾナロール」は、日本や台湾の北西太平洋に分布する「シワヤハズ」という褐藻類にしか含まれていません。2008年に東京海洋大学の先生と藻類の持つ抗炎症作用に関して共同研究を始め、約150種類の藻類を試していくなかで、もっとも抗炎症作用が強かったのがシワヤハズ。そしてそこにふくまれているテルペノイドが「ゾナロール」だったのです。
 この研究成果は2014年に論文として科学雑誌に掲載され、その後、特許が2つ、論文も2つ出ています。現在は人への応用を目指して、シワヤハズの乾燥粉末を使った研究を進めていて、いずれは医薬品や健康食品として市場へ送り出したいと思っています。

■今後、なにかチャレンジしてみたいことなどはありますか。

 質量分析を用いたメタボロームという新しいシステムを使った研究を進めたいですね。これは細胞内にある100種類くらいの化合物を一度に測定できるシステムで、それを使って食材の分子の作用点がどこかを測りたいと思っています。これまでの生化学では、まず細胞から目的の化合物を抽出し、それを個々に計測していたのですが、メタボロームならそれが一気にできます。単純に時間が短縮できるだけでなく、細胞の働きを一度に知ることができるので、それらの関係性からなにか見えてくるものもあるでしょう。
 私はもともと薬理学からスタートしているので、細胞に対する薬理作用からすべての思考が始まります。細胞の全体像が見えることで、新しい物がいろいろ見つかるだろうと思っているのです。寿命延長のメカニズムを知るために、メタボロームを使った研究を進めていきたいです。 すなわちメタボロームを使って、細胞の働きをまとめて知ることを目指したいです。

■最後に学生へのメッセージをお願いします。

 若い学生さんたちには、「食べ物」をちゃんと考えてほしいですね。さらに「食べ物」が寿命をなぜ伸ばすのかに興味を持っていただけると嬉しいです。さきほど説明したようにセロトニンがきちんと分泌され、日々幸福感を感じるのは、ニューロンのミトコンドリアが働いていれば当たり前のことです。多くの人が、落ち込みがちなときは、その理由を人間関係やストレスなどの問題に求めがち。けれど私はそれよりもむしろ「食」がおかしいのではないかと考えます。
気分が乗らないときにはストレスや人間関係といった外的要因を考えるだけではなく、食を改善してみるのもひとつの手だと思います。一言で言うと、ミトコンドリアを活性化させる食事を心がけてみましょう、ということです。
 精神と身体の好循環がないと健康な長寿は実現できないのです。脳と体は一体。あるいは、ミトコンドリアと精神は一体、と言えるかもしれませんね。 セロトニンをきちんと働かせて、それにより幸福感を感じる人生を歩むこと、これこそが必要なのです。食を正すことで、脳のミトコンドリアにエネルギーを供給する人生を歩む、ということです。人の本来の姿を大事にする。これが「ミトコンドリアと共に歩む」という意味です。

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