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スマートグラス  アマゾンのスマートグラス「Echo Frames」には、まだまだ課題が山積している:製品レヴュー

これまでずっと、スマートグラスに期待し続けてきた。『アイアンマン』のトニー・スタークが身につけているように仮想現実(VR)をホログラフィーとして表示し、人工知能(AI)アシスタントが会話してくれるようなメガネを自分でもかけてみたいのだ。しかし、これまでのところ現実のスマートグラスは、どれもスタークのデヴァイスには遠く及ばない。アマゾンによる最新のスマートグラス「Echo Frames」は、「約束は大きく、結果は小さく」というスマートグラスの名高い伝統を引き継いでいる。本質的には、顔に装着する「Echo Dot」といった感じだ。そのすべてがアマゾンの音声アシスタント「Alexa」とのやり取りを中心に構築されている。レンズにスクリーンが表示されないところは、グーグルが買収したNorthの「Focals」やほかのスマートグラスとは異なる。アマゾンは「話すこと」と「聴くこと」だけに専念しているわけだ。

「普通のメガネに見えない」という問題

そんなEcho Framesには、かなり期待していた。スマートグラスをうまく機能させる方法はあるし、アマゾンは正しい方向に向かっているように思えたからだ。

時間とお金をそれなりにつぎ込むのだから、スマートグラスには通常のメガネとほぼ見分けがつかない外観であってほしい。スマートグラスをかけて街を歩いていても、そのことを誰にも気付かれないほうがいい。おしゃれな度付きメガネと本質的に同じ輪郭でなくてはならないのだ。

 

ここがEcho Framesの最初の失敗点である。どうやっても普通のメガネには見えない。

Echo Framesをかけるとどんな感じになるのか知りたければ、安いサングラスを手に入れて、両方のツルにリップクリームの容器をテープで貼りつけ、それを絶縁テープのような目立たないもので巻いてみるといい。異様なほど分厚くなるので、長時間のかけ心地がよくない。試してみると、1時間もかけると耳に(まるでアマゾンの倉庫で働く人々のような)疲労を感じた。

PHOTOGRAPH BY AMAZON

そして225ドル(約24,000円)という価格にもかかわらず、壊れやすそうな感じがする。ツルは最初からゆるい感じで、顔にフィットしない人も結構いるだろう。この1~2世紀に出回ったほとんどのメガネとは異なり、折り畳むこともできない。

 

マグネットが付いたケーブルで充電でき、本体には電源ボタンとマイクのミュートボタンが付いている。音楽を長時間(連続3~4時間ほど)聴いたりしなければ、充電はだいたい1日もつ。

普段メガネをかけていない人は、ちょっとクラーク・ケントになったような気分になるかもしれない。Echo Framesには、サングラスという選択肢もない。メガネ店にもっていけば度付きレンズを入れることもできるが、店でいちばん安いフレームのほうがずっとおしゃれなはずだ。

スマートグラスには、スマートフォンやイヤフォン、スマートウォッチ、あるいは人間の眼からは得られない便利な機能も必要になる。そうでなければ、スマートフォンのような既存の便利なガジェットを使えばいい。

スマートフォンがそばにないときにAIアシスタントに話しかけたいなら、同じような価格のワイヤレスイヤフォン「Pixel Buds」や「Galaxy Buds」「AirPods Pro」を使えばいいし。高性能なヘッドフォンから起動することだってできる(素晴らしい製品は山ほどあるのだ)。もっと現実的になるなら、スマートフォンを探してくればいいだろう。なったAlexa

Echo Framesを身につけていれば、Alexaに話しかけることができる。これはさまざまな場面で便利だが、それだけのことだ。

実際にEcho Framesは、Alexaと同じことができる(ただし、スマートフォンが近くにあることが条件だ。何をするにもスマートフォンが必要になる)。例えば、自分宛てのテキストメッセージを読み上げてもらったり(アマゾンにテキストを読ませる前にプライヴァシーへの影響を考慮したい)、曲の音量を調整したりといったことが可能だ。

ツルに沿って指を滑らせると、音量を上下できるのはいい。これこそメガネに見えるスマートグラスに求めている機能だ。しかし、この利点はほんのわずかなものだし、うまく使えない場合もある。

 

Echo Framesではスピーカーに角度が付いているので、Alexaが話した言葉はEcho Framesをかけている人にしか聞こえないと謳っている。だが使ってみた経験から言うと、これは正しくない。Alexaの声は周りの人にも聞こえてしまうのだ。

内容まではわからないにしても、聞こえる範囲ぎりぎりにいれば不気味なささやき声が耳に入ってくる。その人が怒れる霊に取りつかれていると思うかもしれない。

また、間違った場所をタップやスワイプしてしまって、意図せずに音量が異様に大きくなったり小さくなったりといったことが簡単に起こりうる。公共の場にいて、ちょっと間違えてフレームを触ってしまったばかりに、自分が聴いているエロティックな曲をいきなり周りの人に聴かれてしまう状況を想像してみてほしい。

「黎明期」であることの証明

あれこれ書いてはきたが、いつの日かスマートグラスは便利なものになるはずだと思う。Echo Framesは、わたしたちがまだスマートグラスの「黎明期」にいることを示しているだけなのだろう。

 

不器用で、ちょっと不格好で、大したことはできない。公共の場で使えば、いまだに“盗撮”しているように思われてしまう。

グーグルが不運な実験的製品「Google Glass」を初めて市場に投入した2013年以来、スマートグラスはプロダクトデザインにおける「イカロスの翼」になってきた。どれだけ多くの巨大IT企業が太陽に向かって舞い上がろうとしても、常に次の順番を待っている巨人がいるのだ。

それでもアマゾンなら、太陽にたどり着けるかもしれない。ただしAlexaは、顔に装着するより自宅にあるほうが役立つ音声アシスタントであることに変わりはないだろう。

◎「WIRED」な点
目の前にスクリーンを表示しない。一部のスマートグラスと比べて、ちょっとだけ見栄えがいい。△「TIRED」な点
普通のメガネのように折り畳めない。本物のメガネには見えない。大きすぎる。225ドル(約24,000円)もするのに、Alexaに話しかけるのにはスマートフォンが必要。ワイヤレスイヤフォンが不得意なことは苦手

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